たまたまの出会いを仕事に変える準備術と、専門分野の絞り方|monotips station 第332回
準備しすぎずに偶然の出会いを仕事に変えるコツと、行政書士が業務の種類と顧客のスタンスの両面から専門分野を絞ってきた経緯を語る回。

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たまたまの出会いを仕事に変える準備術と、専門分野の絞り方|monotips station 第332回
イントロダクション
収録日2026年10月6日、放送予定日10月7日のmonotips station 第332回。10月に入り下半期がスタートし、個人事業主にとっては年度末までのカウントダウンが意識される時期に、あらかわとしばっちが2本の実務ネタを語ります。
冒頭では、しばっちがイベントで知り合った新人の行政書士と話したことで、自分自身の「初心」を思い出したというエピソードが紹介されます。この気づきが、今回の2つのテーマをつなぐ通奏低音になっています。
あらかわパートは、「準備しすぎずに人に会いに行くコツ」。偶然の出会いを仕事につなげるための、小さいけれど具体的な工夫を紹介します。
しばっちパートは、「専門分野はどうやって絞ればいいか」。新人行政書士から実際に受けた質問をもとに、業務の種類で絞る考え方と、付き合いたい顧客のスタンスで絞る考え方の両方を共有します。
準備に時間をかけすぎている人にも、専門を決めきれずにいる人にも、今日から試せるヒントをお届けします。
1. 準備しすぎずに人に会いに行くコツ
1-1. 「たまたま」が重なった一週間
今回のあらかわパートのきっかけは、前日にしばっちが参加した地域の屋台出店でした。雨の中での出店だったにもかかわらず予想以上に売れ行きがよく、あらかわは「場所が近いというだけで、これだけ気持ちが楽になるのか」と実感したといいます。普段はイベントのために東京まで足を運ぶことが多いだけに、「集合の30分前まで家でゆっくりしていても間に合う」距離の近さが、仕事のやりやすさに直結すると気づいたそうです。
同じ週には、iPhoneの故障というアクシデントもありました。修理店舗の近くで時間が空いたため、スケジュールが合わず2週間先延ばしになっていた大阪の商談相手に「今なら会えますが」と連絡したところ、その場で面会が実現し、契約につながったといいます。トラブルがきっかけで偶然の商談が生まれた一例です。
1-2. 「準備しすぎない」会い方という視点
あらかわは、この週に読んだ糸井重里さんのコラムの内容を紹介します。人に会うとき、相手について詳しく調べて臨むのが一般的によいとされますが、糸井さんは「あまりしない」と書いていたそうです。
理由は、知識を相手にぶつけることが目的ではなく、出会いの場そのものを一つの生き物として捉えているから。お互いが事前に相手のプロフィールを読み込んで臨めば、それは「お互いのWikipediaを読み合って終わる」だけの時間になってしまう、という指摘です。
調べすぎると、会話の化学反応が起きにくい
あらかわは「ひけらかす場にしてはいけない」と強調します。準備した情報を無理に披露しようとすると、かえって相手の話が耳に入ってこなくなる感覚があるそうです。特に「この商談を絶対に決めるぞ」と気合を入れているときほど、相手の言葉が入ってこない経験があるといいます。
依頼する側・される側で、準備の濃さは変わる
一方でしばっちは、あらゆる場面で無準備が正解とは限らないと指摘します。仕事を依頼される立場としては、相手がどんな考え方の専門家で、何を得意にしているかを事前に調べてきてもらえた方がありがたい、という現実的な視点です。著名人への訪問と通常のビジネス商談とでは、最適な準備の濃度が違うという整理です。
「場が良ければOK」ではなく、対等な関係を作る準備
準備しすぎないことと、ノープランで臨むことは別物です。あらかわが勧めるのは、公式サイトを10分だけ見て、聞きたいことを一つだけ決めておく程度の軽い準備。「初めまして、何屋さんですか」からでは失礼になる場面もあるため、最低限の下調べは残しつつ、そこから先は会話の流れに任せる姿勢がポイントです。
「向こうに対してやっていった準備をひけらかす場にしちゃだめ」(あらかわ)
この発言は、準備不足の開き直りではなく、準備した情報を会話の主役にしないための線引きとして語られています。
1-3. 「たまたま」を起こすための3ステップ
あらかわはこの回で、偶然を引き寄せるための具体的な3ステップを提案しています。
まず、用事のついでに15分だけ今週の外出予定を見返すこと。次に、近くにいる人へ気軽に連絡してみること。「ご迷惑でなければ」と前置きしつつ軽く連絡するだけで、スケジュールが合わなかった商談がその場で成立することもある、という実体験に基づくステップです。
準備段階では、相手を知るために公式サイトを10分だけ見て、聞きたいことを一つだけ決めておく。そして会った当日のうちに、何を聞いたか・何が新しい発見だったかを一行メモに残しておく。あらかわ自身は日々の出来事を音声入力で記録しており、1分間話すと平均400字前後になるといいます。この習慣が、後から「あの話とこの話がつながった」という気づきを生む土台になっているそうです。
1-4. アンラッキーを前向きに読み替える
iPhoneの故障という一見マイナスな出来事が、結果的に商談成立につながったエピソードから、あらかわは「損したと思ったことが、結果的にラッキーだったと思えるかどうか」という姿勢を提案します。たとえ本当にアンラッキーなまま終わったとしても、その経験自体がほかの人が得にくい体験になる、というのがあらかわの考え方です。
電話やメールだけでは伝わらない背景も、実際に会えば伝わります。道筋を作りすぎず、偶然の出会いを大切にすること。これが今回のあらかわパートの核心です。
2. 専門分野はどうやって絞ればいいか
2-1. 新人行政書士との対話から見えた「初心」
冒頭でしばっちが触れていたように、今回のテーマはイベントで知り合った新人の行政書士から実際に受けた質問がきっかけです。脱サラして独立したばかりの人や、公務員を退職して試験免除で登録した人など、年上の新人と話す機会があり、「どうやって専門分野を絞ればいいか分からない」という悩みを聞いたといいます。
しばっち自身も独立当初は、専門を絞ったらお客さんが減るのではという不安から、何でも受けると答えがちだったと振り返ります。その経験を踏まえ、今回は自分の事務所がどう専門を絞ってきたかを具体的に共有する回になりました。
2-2. 業務の種類で絞る: 3つの軸とその背景
しばっちの事務所は現在、建設業関連の許可、外国人の在留資格関連、事業計画作成支援という3つの軸で業務を構成しています。年や時期によって比重は変わりますが、直近では建設業関連の比重が最も大きいといいます。
建設業: 「手続きだけ」から一歩先のアドバイスへ
建設業許可は、行政書士の開業本に必ず載っているほど歴史のある業務で、許可取得や変更届の提出自体は経験があれば対応できる手続きです。しばっちが意識しているのは、その先にある「どんな義務が発生するか」「変更届をいつ出すべきか」「出さなかったらどうなるか」といった、一歩踏み込んだアドバイスを大事にする姿勢です。
外国人の在留資格: 増える需要と、増えるコンプライアンスの重さ
外国人材の増加に伴い、在留資格に関する違法案件に巻き込まれるケースのニュースも増えており、しばっちはこの分野を「高い倫理観とコンプライアンス意識が特に求められる業務」と位置づけます。過去に提出した資料と今回の申請内容に整合性が必要なため、本人が資料を保管できているかを、本人だけでなく雇用主側にも確認してもらうことが重要だと語ります。
事業計画作成支援: 補助金ブームと実績報告の重み
この業務は補助金の需要と連動し、ブームがあれば増え、政策の方向性次第で減ることもあります。しばっちが注意を促すのは、交付後の実績報告対応です。不正を防ぐための確認作業が年々厳しくなっており、最後まで丁寧に対応しようとすると、想定以上に工数がかかるという実務上の負担も正直に共有されました。
「やってるからできるわけじゃなくて、やってない人はプラス目もマイナス目も語れない」(しばっち)
専門を名乗るには、その分野の良い面だけでなく負担やリスクも語れる実績が必要だという、独立志望者への率直なメッセージです。
2-3. 専門分野が決まった経緯も、結局は「偶然」だった
しばっちが建設業を軸の一つにしたきっかけは、先輩から建設業の専門部会への参加を打診されたことでした。断らずに引き受けたことが、現在の強みにつながっています。外国人の在留資格についても、しばっちが独立した時期がちょうど関連需要が増え始めたタイミングと重なったという、巡り合わせの要素が大きいと振り返ります。
これは、あらかわパートで語られた「たまたまを大切にする」姿勢と地続きのエピソードです。偶然の依頼や縁を断らずに受け止めた結果が、後から振り返ると専門分野の土台になっていた、という構図です。
2-4. 手続きの種類だけでなく、「付き合いたい顧客のスタンス」で絞る
しばっちは、専門分野の絞り方には業務の種類で絞る方法に加えて、どんな顧客と付き合いたいかという「スタンス」で絞る方法もあると提案します。たとえば「法令遵守をきちんとしたい」「周囲から後ろ指をさされない体制を整えたい」という価値観を持つ顧客に来てほしい、という軸の立て方です。
業務の種類とスタンスの両方で絞り込めれば理想的だとしながらも、しばっちは「目の前のお客さんに誠実に向き合い、違和感のある仕事はきちんとパスしていった結果、残っていったものが専門になる」という結論に至ります。頭で戦略的に決め切る部分と、偶然や実践の積み重ねで決まっていく部分、その両方があるという整理です。
エピソードの総括
今回の学びとポイント
今回の2テーマに共通するのは、「偶然をどう受け止め、仕事につなげるか」という姿勢です。
押さえておきたいポイント
- 人に会うときは、公式サイトを10分見て質問を一つだけ決める程度の軽い準備にとどめ、会話の化学反応を優先する
- アクシデントや予定変更をマイナスで終わらせず、空いた時間や近くにいる人への連絡につなげる
- 専門分野は、建設業・外国人在留資格・事業計画作成支援のように業務の種類で絞る方法と、付き合いたい顧客のスタンスで絞る方法の両方から考えられる
- 専門分野の土台は、戦略的な選択だけでなく、断らずに引き受けた偶然の依頼の積み重ねからも生まれる
あらかわ・しばっちからのメッセージ
二人の対話から見えてきたのは、効率化やAI活用が進むほど、意図的に「たまたま」が起きる余地を作る必要があるという考え方です。オンラインで完結する日々では、偶然の出会いは自然には増えていきません。
次のステップ
今週、近くにいる人に軽く連絡を取ってみる、または気になる相手の公式サイトを10分だけ見て質問を一つ用意してみてください。専門分野に悩んでいる人は、業務の種類だけでなく「どんな顧客と付き合いたいか」という視点からも、自分の強みを棚卸ししてみるのがおすすめです。


