作れば売れる時代はもう一段落した、情報は漏れる前提で持たない|monotips station 第336回
物販ECは金額が過去最高でもEC化率はほぼ横ばい、という市場調査の読み方と、店とネットを二択にしない売り方を整理します。続く話題は、情報は漏れる前提で持たず、どこまで説明するかを考える第336回です。

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作れば売れる時代はもう一段落した、情報は漏れる前提で持たない|monotips station 第336回
イントロダクション
2026年11月4日放送のmonotips station 第336回は、あらかわとしばっちの2本立てです。あらかわのテーマとして紹介されたのは「ネットショップを作れば売れる時代は終わったのか」。しばっちのテーマとして紹介されたのは「情報は漏れる前提で戦う中小事業者のリスク管理」です。
前半は、金額の見出しだけでは見えない物販のEC化率です。後半は、漏れる知らせが続くなか、中小がどの情報を持たないか、です。作って終わり、買って安心、では足りない、という問題意識が二つを並べています。
1. ネットショップを作れば売れる時代は終わったのか
1-1. 過去最高の金額と、動かない比率
経済産業省の「電子商取引に関する市場調査」2025年版が入口です。収録では10月21日公表、約2週間前と紹介されました。B2CのEC市場は27.6兆円、過去最高、前年比5.5%増。物販15.8兆円、サービス8.9兆円、ゲームや電子書籍などを含むデジタル分野2.8兆円、という内訳です。
物販のEC化率は9.8%で、前年の9.78%との差は0.02。2019年は6.76%、コロナ禍でプラス1.32の8.08%になり、2020年でも約92%はネット以外の取引だった。2020年から2025年はプラス1.8%ほど。売上ベースで、5年かけて移った部分はある、という読みです。
金額が伸びて比率が動かないのは物価上昇ではないか。物販EC売上は約4%増、B2C-EC全体は5.5%増と紹介されています。そこには値上げの影響も含まれるのではないか、という話者の見方です。過去最高でなければまずいに、見出しだけは絶好調に見える。伸び率の言い方と調査の集め方は、会話の中でも推測のままです。
1-2. 1割は平均で、店に残る商品がある
EC化率の1割は平均です。書籍・映像・音楽ソフトは57.9%で、店に本もCDも無い、という実感と重なります。次いで生活家電・AV・PCです。生活雑貨・家具・インテリアは31%で69%が非EC取引、衣類・服飾雑貨はネットが24%、ネット以外が約76%、化粧品・医薬品は9.11%で非EC取引が約91%、食品・飲料・酒類は4.66%で非EC取引が約95%、自動車・バイク・パーツは4.16%から3.89%です。家具などの区分は、売上は伸びてもEC化率は下がった、とも語られました。
残る理由は、試着、その場で試せること、ドラッグストアの安さ、送料負け、毎日のものは近くで足りること、高額なものは見て決めたいこと、です。型番で選べるものはネット、触るもの・すぐいるもの・安いものは店。アメリカの小売EC化率は17.1%で前年16.3%、8割強はEC以外だ、という比較も出ました。日本は店が近く、店で買うのが不便ではない、という意見です。
ここからは年次のEC市場調査とは別に、2026年9月の商業動態統計速報の話です。前年同月比で、無店舗小売業はプラス0.4%、小売全体はプラス2.3%と紹介されました。訪問販売や自販機も括りに入り、店とネットの両方がある会社は店舗側に数えられる、と話されています。
1-3. 作る仕事から、人を連れてくる仕事へ
サイト作りは簡単になった、という話も出ました。モールに出す方法もあり、決済までつながる。簡単なら競合もすぐ増える。開いたあとに残るのは、広告費、SNS、リピーター、配送や梱包の値上がりです。
「とりあえず作ったら売れる自動販売機っていうところから、ネットショップを作ることが仕事じゃなくて、ネットショップを作った上で人を連れてくるところまで含めてショップ運営者の仕事になった」(あらかわ)
EC化率が低い業界をチャンスと決めつけて乗ると痛い。低い理由がある。向いている商品で乗った方がいい、と語られました。型番の相乗りは売れる。独自の店はそこでしかないものが要る。限定のボードゲームを送料込みでその店から買った。限定がなければいつもの場所だったかもしれない、という体験が出ました。
出会う場所と買う場所は分ける。無印やダイソーは、ネットで店頭在庫が分かり、見てから店へ来る。文具の催しとして「文具女子博」が挙がり、大小の会場でまとめて買う、と話されています。イベントのあとネットも動くので、受け皿は先に置く。広告で一人に届くコストは上がり、その場の会話は背景と紹介を生む。ネットと店は二択ではない、という着地です。店を持つ人は、組み合わせを研究してみたら、と提案されています。
2. 情報は漏れる前提で戦う中小事業者のリスク管理
2-1. 買えば守れる、ではない
漏れた、という知らせが多すぎる、という実感から始まっています。登録したサービスの多くが漏れたように感じる。メールが来て、ニュースにも毎日のように出る。高いセキュリティのソフトを買えば安心、ではない、という見方です。
ホワイトハッカーを雇う方法はあっても、小規模には費用をかけられない。止まったままのネットショップも目にし、費用をかける理由が薄れてきたように見える、という話です。
以前はたくさん預かり、誰が買うかを分析せよ、と勧められた。もう違う。持たない方が強い。事務の人がどこまで見られるか。伝えなければ漏れない。もらう項目は最小限。そう語られています。
カードは自店に置かず、Amazon Payのような仕組みへ渡す。ただし入力画面が自店のままだと、保存していなくても途中で漏れ続ける、と指摘されました。画面ごと相手に飛ばし、自店では入力させない、という話です。
2-2. 漏れません、とは言わず、持たない
限られた取引先とは、考え方を先に話しておく。つながっている時点で、漏れません、とは言えない。持たなければならない資料は、金庫などネットの外とのバランスで置く、という話です。
大きなサービスなら必ず安全だとは言い切れず、小規模は狙われていないだけかもしれない、という見方も出ました。個別の事故原因を検証する話ではなく、事業規模だけで安心できるのかを考える会話です。
何もしていない、は不誠実だ、と話は続きます。ここまでやっている、と伝わる状態にしておく。漏れたら仕方がない、と思ってもらえる関係を作る。説明の範囲を先に見せる必要がある、という意見です。
使う側の最低限は二つです。通知が来るカードだけを使い、変な決済にすぐ気づく。家族と、もう漏れているよね、と話した、という実践です。家族カードは誰の分か分かりにくく、件数が増えると紛れる。それでも大きな金額に気づけることには意味がある、と着地しています。もう一つは、利用しているサービスで二段階認証を有効にすることです。試されて止まった知らせが来ることがある、とも話されています。
企業側にできることは持たないことです。スプレッドシートの共有を誤り、開ければ見える場所に個人情報を置く。一人でも起きます。AIの話になりがちだが、ローテクな手段を数多く試せるようになった結果ではないか、という見方です。氏名や電話やメールは漏れている前提でも、特許のような根幹は、ネットから切り離して置く。正解は一つにできない、という締めです。
「完璧なデジタルの要塞は作れません。持たない勇気と嘘をつかない説明、そして日々の誠実な仕事こそが、私たちにできる最大のリスク管理です」(しばっち)
登録したくない気持ちが、二つのテーマをつなぐ
終わりがけに、漏れる知らせが続くと、新しい店への登録が嫌になり、ネットショップの売上は落ちるのではないか、という見方が出ました。すでにアカウントのある大きいモールへ戻る動きもありそうだ、という話です。
Shopifyで店を動かしている先では、メールを送ると配信をやめ、アカウントも消してほしい、という連絡が来ている、と語られました。公式LINEも名前が挙がり、近いうちに続きを話せそう、で留まっています。
タイムズの件にからめ、漏えいのせいでできた借金を誰が負うか、という想像も出ました。その話は、話した側が「今の話は妄想です」と切っています。答えは出ていません。動きと、経営上のリスクとして見ていく、というところで回は閉じました。
monotips stationについて
monotips stationは、ビジネスの小技を紹介するWEBマガジン「monotips」から生まれたPodcastです。編集長のあらかわと副編集長のしばっちが、毎週、ビジネスに役立つTIPSを紹介しています。
番組への感想は、WEBマガジン「monotips」のお問い合わせフォーム、またはnoteやXで受け付ける、と収録で案内されています。


