MonotipsStation · #326

SaaSのやめ方・買い方の工夫と、プロが引く「無料相談」の境界線|monotips station 第326回

SaaSを解約する前に安く買う工夫と依存脱却のリスクを整理し、専門家が「ちょっと教えて」にどう線を引くかを考えるmonotips station第326回。

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SaaSのやめ方・買い方の工夫と、プロが引く「無料相談」の境界線|monotips station 第326回

イントロダクション

収録日2026年8月25日、放送予定日8月26日のmonotips station 第326回。今回もあらかわとしばっちの実務ネタ2本立てです。

あらかわパートは、「SaaSをやめる前に、買い方を工夫するTips」。値上がりが続く会計ソフトやAdobeとどう付き合うか、解約や自作への切り替えに潜むリスクまで踏み込んで語ります。

しばっちパートは、「『ちょっと教えて』の落とし穴。プロとしての無料と有料の線引きTips」。専門家に日常的に寄せられる気軽な質問に、どこまで無料で答え、どこから有料に切り替えるべきかを掘り下げます。

固定費を見直したい経営者にも、専門知識で仕事をしている人にも、線引きの物差しになる回です。


1. SaaSをやめる前に、買い方を工夫するTips

1-1. 値上がりを続けるSaaSと、どう距離を取るか

会計ソフトやAdobeのように、毎月・毎年払い続けるSaaS(Software as a Service)は、業種によって依存度が大きく変わります。基幹ソフトやAIツールを多用する会社もあれば、営業ならメルマガ配信、宿泊業なら予約システム、飲食店ならレジや予約管理と、日常業務の中心に組み込まれていることも珍しくありません。

あらかわ自身、Adobeのクリエイティブクラウドが今年大きく値上がりし、月1万円、年間にすると10万円ほどの負担になっていると明かします。かつて買い切りで6〜7万円だった頃と比べると、印象が大きく変わったといいます。

会計ソフトについても、「毎年やめようと思いながら、毎年払い続けている」という自身の悩みを率直に語りました。法人向けプランは月5000円ほどで、年間では6万円近くに上るとのことです。

1-2. まずは「安く買うルート」を探す

高い固定費をいきなりやめる前に、あらかわが最初に検討するのは「安く買う方法がないか」を調べることです。Adobeのように利用者の多いメジャーなツールは、家電量販店やECサイトでキャンペーン価格が出ることがあり、収録時点でもヨドバシやAmazonでクリエイティブクラウドの割引が出ていたと紹介していました。

ポイント1: 費用対効果で判断する

キャンペーンを追いかけること自体が目的ではありません。あくまで、そのツールを使い続ける前提があってこそ意味がある工夫です。乗り換えや自作より先に、正規の買い方を工夫する余地がないかを確認する、という順番が大切だとあらかわは強調します。

ポイント2: 印刷物が絡む仕事は特に依存度が高い

しばっちが指摘したように、印刷物を扱う仕事ではAdobe以外の選択肢が一般的でなく、事故を避けるためにも定番ツールから離れにくいという事情があります。日常的な作業効率だけでなく、「取引先とのやり取りで事故を起こさない」という観点も、ツール選びの判断材料になります。

1-3. SaaSの料金は「半分保険料」と捉える

あらかわが今回強調したのが、SaaSの月額料金を「保険料」として捉える視点です。

「何も起きない月は、こんなに払ってもったいないなと思う。でも、ログインできなくなった、データが消えた、アップデートで動かなくなった、担当者が辞めた、そういうことが起きたときに、自前でやっていたら終わってしまう」(あらかわ)

普段は目立たなくても、トラブルが起きた瞬間に効いてくるのがSaaSの価値です。自動化や仕組み化を人任せにしている場合、それが止まったときに自分で対処できないなら、そもそも自動化すべきではないというのがあらかわの考えです。夜であろうと旅行中であろうと、止まれば問い合わせは自分のところに来ます。

見えにくいコストの中身

サーバー代自体は月1000円程度でも、本当のコストはそこではありません。バックアップの管理、権限やパスワードの管理、OSやライブラリのアップデート追従など、外部サービスと連携するシステムほど、世の中の変化を追いかけ続けるコストがかかります。あらかわはこれを「人を一人雇ったのと同じ」と表現していました。

1-4. 自作に切り替えるなら、自分で直せることが条件

あらかわは、4年間使ってきた物販の基幹システムを、今月ついに解約すると明かしました。自作システムへの切り替えで、責任者は自分と社員だけに絞られるため、何か起きても自分で直せるという判断です。

ただし、切り替えは簡単ではなかったといいます。最初に社員の不満をすべて洗い出して機能を作り込んでも、「あれができない」「これができない」という声が続き、実際に「今までのシステムより早い」と言えるようになるまで1か月ほどかかったそうです。

「これ、本当に自分で直せない人がやるべきじゃないなと思いました」(あらかわ)

自分でメンテナンスできないなら、無理に自作へ寄せず、有料ツールに任せた方がいい。逆に、自分で直せる体制があるなら、乗り換えは十分に選択肢になる、というのがここでの線引きです。

さらにあらかわは、止まったときに気づける仕組みも合わせて紹介しました。異常が起きたらアラートを飛ばし、飛んできたらAIに直し方を聞く、という運用を日常的に行っているといいます。「壊れていることに気づける仕組み」を作っておくことが、自作への切り替えとセットで欠かせません。過去には請求書の送り先を間違えて冷や汗をかいた経験もあり、実際に起きうるリスクとして語られていました。

読者へのヒントとして、SaaSを見直すときは次の順番で考えるとよさそうです。まず今契約しているツールを棚卸しし、次に安く買えるルートがないか探す。それでも高いと感じるなら、止まったときに誰にどう迷惑がかかるかを洗い出し、自分でメンテできる範囲だけを自作に切り替える。この順番を飛ばして「AIで自作すれば安くなる」と考えると、思わぬところで足元をすくわれかねません。


2. 「ちょっと教えて」の落とし穴。プロとしての無料と有料の線引きTips

2-1. 「ちょっと教えて」に、みんなどう線を引いているのか

しばっちが今回投げかけたのは、専門家として日常的に受ける「ちょっと教えて」という気軽な質問に、どこで線を引いているのかという問いです。行政書士という仕事柄、無料の雑談と有料の相談の境目を意識せざるを得ない場面が多いといいます。

一般論であれば、蓄積してきた知識をもとにすぐ答えられます。しかし、「このケースは許可が取れますか」といった個別の話になると、証明できる資料は何か、どうすれば要件を満たせるかまで踏み込む必要があり、その場で無責任に答えるわけにはいきません。

2-2. 無責任な回答は、事務所の理念に反する

しばっちの事務所では「きちんとした仕事をお客さんに届ける」ことを大切にしています。その場のノリと勢いで調査もせずに回答してしまうと、結果としてお客さんを誤った方向に導いてしまうリスクがあり、この理念と矛盾してしまいます。

論点1: 顧問契約とスポット相談の違い

継続的に相談を受けられるのは、顧問契約という「サブスク」のような仕組みがあってこそです。契約のない相手から細かいところまで無料で聞かれ続けると、線引きに悩むのは自然なことだといいます。

論点2: 無料相談会は「オフィシャルな入口」

行政書士会などが開く無料相談会は、社会貢献と知名度向上が目的です。ここでは一般論や、少し踏み込んだところまでは答えつつ、込み入った調査が必要な話は「ここから先は有料相談へ」と案内する運用がすでに確立されているとしばっちは説明します。

論点3: 無料でも、答える労力は変わらない

無料だろうと有料だろうと、答える側の労力は変わりません。「ちょっと教えて」に応じ続けていると、その時間は本来お金を払ってくれるお客さんに使うはずだった時間を奪ってしまいます。

「どこまで回答して、どこから回答しないか。その線引きは、自分にお金を払ってくれるお客さんを守るための防波堤だと思うんです」(しばっち)

2-3. あらかわ流、無料相談への対処法

あらかわは、無料で寄せられる質問への向き合い方をいくつか紹介しました。ひとつは、もらった質問をそのままAIに投げて「AIはこう言っています」と裏取りせずに返す方法です。無料の相談だからこそ、ここまでで十分だという割り切りです。逆に、きちんと責任を持って回答するときは、AIのハルシネーション(誤った出力)も含めてリサーチしたうえで答えるといいます。

もうひとつは、「それはラジオで回答します」と伝えて、そのままPodcastのネタにしてしまう方法です。テーマを提供してもらったと捉えれば、無料相談もむしろありがたい機会になります。

補助金についての質問は特に扱いが難しいと二人は口を揃えます。世の中には無数の補助金があり、その計画に合うものがあるかどうかは簡単には言い切れません。あらかわは、公的な補助金ポータルサイトを検索範囲にしたチャットボットをあらかじめ用意しておき、「ここで調べてください」と案内する発想を提案していました。

2-4. 角を立てずに有料へ切り替える言い方

しばっちが実践している線引きの言い方は、次のようなものです。「一般論としては〇〇です」とすぐ答えられる範囲は無料で応じる。そこから先、個別の込み入った話になったら、「一度資料を拝見して、きちんと調べてから回答させてください。ここからは通常の相談枠になりますが、いかがでしょうか」と、有料であることを正面から提示します。

冷たく突き放すのではなく、「無責任なことは言えないから、きちんと調べたい」という理由をセットで伝えることが、角を立てないコツです。

有料相談で得た回答には、それ自体に意味があるとあらかわは指摘します。

「有料で相談して聞いた話って、意思決定の論拠になるんですよね。ちゃんとお金を払って聞いてきた、という話ができるから」(あらかわ)

ピカソが紙ナプキンに30秒で絵を描き、高額な代金を求めたという逸話にも通じる話です。専門家がすぐに答えられるのは、これまで積み上げてきた知識と経験があってこそであり、その速さ自体に対価が発生します。

しばっちは、自分の名前がついた回答をAIにそのまま任せることに抵抗があるといいます。責任を取りたいから、下調べにAIを使うことはあっても、最終的な回答は自分の言葉で返す。むしろ、相手に生成AIの使い方を教えてあげる方が、双方にとって良いこともあるという視点も加わりました。

自分の専門外であれば、早めに詳しい人へパスを投げることも重要な線引きのひとつです。紹介という行為自体が、紹介した側・された側どちらの信頼にもつながります。

2-5. どんな人と時間を過ごしたいか

最後にしばっちは、線引きの根っこにある考え方をこう語りました。お金がかかると分かった瞬間に離れていく人もいれば、きちんとした回答を求めて有料相談に進んでくれる人もいる。どちらと時間を過ごしたいかを意識することが、線引きの物差しになるといいます。同時に、自分自身も専門家に相談するときは、きちんと対価を払う側でありたいと締めくくりました。

BtoBの取引では有料化を切り出しやすい一方、BtoCの個人客では「くれくれ」の姿勢に出会いやすいという実感も語られました。前もって「どこまでが無料で、どこからが有料か」を整理しておくことが、日々の対応を楽にする準備になりそうです。


エピソードの総括

今回の学びとポイント

SaaSの買い方も、専門家の無料相談も、突き詰めると「責任をどこで引き受けるか」という同じ問いに行き着きます。安さや気軽さだけで判断すると、いざというときに自分や相手を守れなくなるという点で、今回の2テーマは重なっていました。

押さえておきたいポイント

  • SaaSを見直すときは、まず契約中のツールを棚卸しし、次に安く買えるルートを探す
  • SaaSの月額料金は「何も起きないときのもったいなさ」ではなく、トラブル時に効く保険料として捉える
  • 自作への切り替えは、自分でメンテナンスできる体制があるときだけ選択肢になる
  • 無料相談は一般論の範囲にとどめ、個別の込み入った相談は理由を添えて有料へ案内する
  • 有料で受けた専門家の回答は、意思決定の論拠になるという価値がある

あらかわ・しばっちからのメッセージ

固定費や相談対応をどう線引きするかは、経営者にとっても専門家にとっても避けて通れないテーマです。安易にやめる、安易に答える、という選択の先に何が起きるかを想像しながら判断していきたいという姿勢が、今回の2つのテーマに共通していました。

次のステップ

高い固定費のSaaSを抱えている人は、まず契約中のツールを一覧にして、キャンペーンなど安く買える機会がないか調べてみてください。専門知識を仕事にしている人は、自分の中で「ここまでは無料、ここからは有料」という一言を用意しておくと、いざというときに慌てずに済みそうです。


monotips stationについて

monotips stationは、ビジネスの小ワザを紹介するWEBマガジン「monotips」から生まれたPodcastです。編集長のあらかわと副編集長のしばっちが、毎週ビジネスに役立つTipsを紹介しています。

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