MonotipsStation · #324

小規模事業の分散経営と、顧客の一歩先を引き出すヒアリング術|monotips station 第324回

一社依存を避ける分散経営の指標と、顧客も気づいていない本音を引き出すヒアリング術を、あらかわ・しばっちの実体験から読み解く第324回。

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小規模事業の分散経営と、顧客の一歩先を引き出すヒアリング術|monotips station 第324回

イントロダクション

放送予定日2026年8月12日のmonotips station 第324回は、あらかわとしばっちによる実務直結の2本立てです。

あらかわパートは、「小規模事業ほど分散が効く、取引条件を定期点検するTips」。一社への依存がどれほど危ういか、あらかわ自身の実家の工場が経験した取引先喪失のエピソードを交えながら、分散の目安と条件見直しの具体策を語ります。

しばっちパートは、「お客様自身も気づいていない一歩先をどう引き出すか、未来を語らせるヒアリングのTips」。行政書士としての実務から、お客様の言葉通りの要望と、本当にありたい未来がずれているケースへの向き合い方を掘り下げます。

取引先との付き合い方を見直したい人にも、お客様の本音を引き出したい人にも、今日から使える視点をお届けします。


1. 小規模事業ほど分散が効く、取引条件を定期点検するTips

1-1. 一社依存が招く「ある日突然」のリスク

大手一社の下請けとして仕事をしていて、その一社が傾いたときに一緒に倒れてしまう。いわゆる連鎖倒産の話は、よく聞くリスクです。あらかわはこれを「大いにありうる話」として、自身の実家の工場の経験を持ち出します。

一番のメインクライアントだった取引先が、18年ほど前に離れていったときのことです。最初は「急にはなくならない」という話だったにもかかわらず、実際には数か月のうちに取引がなくなり、年商は大きく落ち込みました。立て直す間もなく、リストラに踏み切らざるを得なかったといいます。

この実例が示すのは、悪意のある相手からでも裏切りからでもなく、担当者の異動や組織変更といった、こちらにはどうしようもない事情だけで取引がゼロになりうるということです。相手が悪い会社だったわけではない。それでも、外部の取引先である以上、内部の事情の変化だけでスパッと切られる可能性は常にある。だからこそ分散が要る、というのがあらかわの前提です。

1-2. 上限は「売上」ではなく「MQ比率」で決める

B2Cで顧客が全国に分散しているように見える事業でも、実は卸先が一社に偏っているなど、見えにくい依存が潜んでいることがあります。分散を測るなら、まず一社あたりの依存度を数字で把握することが出発点です。

あらかわが目安にしているのは、一社あたりの売上(PQ)ではなくMQ、つまり粗利ベースの比率です。この比率が3〜4割を超えてきたら危険水域と捉え、そこから先の仕事が増えても、あえて受けない、他に流す、新規開拓に時間を回すといった判断をする。上限を決めておかないと、「仕事が増えてありがたい」を繰り返した末に、その一社がなくなった瞬間に事業が立ち行かなくなってしまいます。

上限を先に決めておくことは、交渉の場での落ち着きにも直結します。ほかにも取引先があるという事実が、一社との交渉における自分の立ち位置を支えてくれるからです。

1-3. 取引条件は生鮮食品、4つの見直しポイント

取引条件は一度決めたら固定というものではなく、時間が経てば両者の状況が変わる「生鮮食品」のようなものだと、あらかわは表現します。円安・物価上昇・生活コストの上昇など、外部環境が変わり続ける中で、数年前の条件がそのまま今も適正である方がむしろ珍しいということです。

見直すべきポイントは大きく4つあります。まず単価。次に作業範囲で、これは契約当初は明確だったはずが、「あれもこれも」となし崩し的に広がっていくパターンが典型です。三つ目が支払いのタイミングと方法で、特に振込手数料を引いて振り込んでくる慣習には注意が必要だとあらかわは指摘します。本来は振り込む側が負担すべきものだからです。四つ目が納期とやり直しの回数、そして契約更新のタイミングです。

「商売はフェアなもの。お互いに相手が良くなってほしいと思って行動しているからこそ、『ここまではできるけど、ここから先はお金がもらえないと動けません』と言えるべきなんです」(あらかわ)

条件を切り出すときは、相手を疑っているわけではないと伝わる言い方が有効です。決算期を理由にする、全取引先に一律で確認していると伝える、あるいは自社側の体制変化を理由にする。いずれも、相手個人を狙い撃ちしているのではないという前提を共有する工夫です。

1-4. 点検を実行する3ステップ

取引先を見直すタイミングは、平時だけとは限りません。支払いサイクルを後ろにずらしたいという相談、担当者交代が続く、決済が急に通りにくくなる、依頼の形がまとまった発注から細かい依頼へ変わる、なんとなく話が通りにくくなる。こうした予兆が重なったら、点検を前倒しするサインです。

そのときにいきなり関係を切るのではなく、売掛残高を把握しておく、その取引先に割く時間を減らす方向に寄せる、特別扱いしていた条件を標準に戻す、といった安全弁を順に用意していくのが現実的な対処です。

日常の実践としては、シンプルな3ステップに落とし込めます。まず取引先を売上順に書き出す。次に、最大の取引先の上限値を決める(あらかわの目安は30〜40%)。最後に、点検日をカレンダーに決めておく。お盆や決算月など、毎年決まったタイミングに設定しておけば、忙しさに紛れて後回しにすることもなくなります。

「決めておくべきは、相手にどう思われるかではなく、自分の運用ルール。自分軸で動くから、フェアにお願いできるんです」(あらかわ)


2. お客様自身も気づいていない一歩先をどう引き出すか、未来を語らせるヒアリングのTips

2-1. 「言われた通り」にやると、誰も幸せにならないことがある

しばっちが行政書士として大切にしているのは、お客様の言っていることをそのまま「やりたいこと」として受け取らないことです。お客様が口にする要望は、実は「本当にありたい未来」に向かうための、今の時点での一歩にすぎないことが多い。その一歩が、本当にお客様の未来につながっているかどうかを判断して伝えることが、専門職としての役割だといいます。

あらかわもこれに強く共感します。言われた通りに実装しても、誰もハッピーにならないケースがある、という感覚は業界を超えて共通するものです。最初は依頼された通りにやった方が商売としては成立しやすい。それでも、最終的にどうなりたいかを共有できていないと、評判を落とすことにすらつながりかねません。

「お客様が今やりたいと言っていることが、本当にありたい未来につながっているかどうかを判断して、お伝えしなきゃいけない」(しばっち)

2-2. 過去の悔しさを掘り起こし、未来の一歩につなげる

いきなり「将来どうしたいですか」と直球で聞くと、お客様にとって負担になることがあります。そこでしばっちが使うのが、過去の悔しかった経験を掘り起こす質問です。

建設業の許可を例にすると、「許可を取ろうと思ったきっかけは何ですか」と聞くだけで、お客様の側から「許可がなくて受けられなかった案件があった」と語ってくれることが多いといいます。この一言が出てくると、次に必要なのは単に「許可を取る」ことではなく、「今後どんな案件を受けられるようになりたいか」という視点での許可の選び方だと分かってきます。建設業の許可には段階があり、売上規模が大きくても特定の許可までは不要な場合もあるため、目指す未来から逆算して必要な許可を見極める必要があるのです。

2-3. 「もし」で想像してもらい、同業の一歩先を共有する

お客様のありたい姿は、本人にも言語化しづらいことがあります。そこでしばっちは「もし」というワードをよく使います。「もし許可が取れたら、今後どんな工事をしていきたいですか」「もし売上が上がってきたら、何をしたいですか」といった問いかけで、お客様に少し先の状態を想像してもらう時間を作ります。

あわせて効果的なのが、少し先を行く同業他社の事例を紹介することです。名前は出せなくても、「似たような立場の方がこういう展開をされています」と伝えることで、お客様自身が自分の未来像を具体的にイメージしやすくなります。

重要なのは、こちらに都合のいい回答を引き出すための情報ではなく、お客様が自分で決めるための情報を出すという姿勢です。最終的に決めるのはお客様であり、専門職の役割はその判断材料を、本人の言葉以上に踏み込んで用意することにあります。

「お客様が口で言っていることだけをやって終わりにするのではなく、もう一歩踏み込んで考えていきたいんです」(しばっち)


エピソードの総括

今回の学びとポイント

今回の2テーマに共通するのは、「今見えているもの」だけで判断しないという姿勢です。

押さえておきたいポイント

  • 一社依存は、相手に悪意がなくても組織変更ひとつで突然崩れうる。分散はPQ(売上)ではなくMQ(粗利)比率で管理し、30〜40%を目安に上限を決める
  • 取引条件は生鮮食品。単価・作業範囲・支払いタイミングと方法・納期とやり直しの回数を、決算期などの節目に定期点検する
  • お客様の言葉通りの要望が、本当にありたい未来と一致しているとは限らない。過去の悔しさを聞く質問と「もし」の問いかけで、本人も気づいていない一歩先を引き出す
  • どちらのテーマも、目の前の情報だけで完結させず、もう一歩踏み込んで考える姿勢が土台にある

あらかわ・しばっちからのメッセージ

取引先との関係も、お客様との関係も、時間が経てば当初とは変わっていきます。その変化に気づかないまま「今まで通り」を続けてしまうと、いつか無理が来る。だからこそ、定期的に立ち止まって点検する仕組みを、自分たちの側に持っておくことが大切だと2人は語ります。

次のステップ

取引先がある人は、まず一社あたりの依存度をMQベースで書き出してみてください。お客様と接する仕事をしている人は、次の商談で「なぜそれをやりたいと思ったのか」というきっかけを一つ聞いてみるところから始めてみるのがおすすめです。


monotips stationについて

monotips stationは、ビジネスの小ワザを紹介するWEBマガジン「monotips」から生まれたPodcastです。編集長のあらかわと副編集長のしばっちが、毎週ビジネスに役立つTipsを紹介しています。

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