MonotipsStation · #322

お客さんの次の一歩を設計する技術と、価格競争から抜け出す差別化|monotips station 第322回

エキスポシティの観察から学ぶ顧客体験設計と、行政書士業務での差別化戦略を語るmonotips station第322回のTips回。

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お客さんの次の一歩を設計する技術と、価格競争から抜け出す差別化|monotips station 第322回

イントロダクション

収録日2026年7月28日、放送予定日7月29日のmonotips station 第322回。今回もあらかわとしばっちの実務ネタ2本立てです。

あらかわパートは、「お客さんの次の一歩を設計するTIPS」。休日に訪れた大型商業施設での観察から、入り口・理解・目的という顧客体験の設計原則を読み解きます。

しばっちパートは、「価格競争から抜け出す、差別化のTips」。許可を取れば結果が同質化しやすい専門職ならではの悩みから、実績や安さでは差がつかない現実と、そこから抜け出す3つの視点を語ります。

ホームページや店舗、展示会の導線に迷っている人にも、専門性はあるのに価格競争に巻き込まれがちな人にも、今日から使える視点をお届けします。


1. お客さんの次の一歩を設計するTIPS

1-1. 商業施設の観察から見えた、体験の設計

あらかわは日曜日、猛暑の中をあえて家族で大型商業施設へ出かけました。いつも通う近所のモールとは違い、テナントの並びに既視感がなく、菓子・食品メーカーの直営店のような、他ではあまり見かけない店が随所に混ざっていたことが印象的だったといいます。同じような雑貨店・アパレル・ファストフードの組み合わせに慣れきっていたぶん、この「見たことのない並び」が新鮮に映ったそうです。

1-2. 手前に置くもの、奥に置くもの

入店してすぐ気づいたのが、雑貨店のレイアウトのロジックでした。

ポイント1: アイキャッチは手前、目的買いは奥

入り口すぐの一等地には、夏のクーリンググッズや旅行用品、ボードゲームといった「なんとなく目に留まる」商品が並んでいました。一方で、文具やコスメなど、目的を持って探しに来る人が多い商品は、レジに近い奥のエリアに配置されています。どうせ検索されて調べられるものは奥に置いても客は辿り着く、だからこそ手前には「何だろう」と足を止めさせる要素を置く、という発想です。

「どうせ検索されるものはわざと奥に置いて、手前にはアイキャッチになる面白い商品を置いて、お客さんを呼び込んでいる」(あらかわ)

ポイント2: 定番と尖りものを両方揃える

フードコートも同様でした。誰もが知る定番の飲食チェーンと、あまり見かけないけれど価格は手頃な専門店がバランスよく並んでいたことに、施設としての「力」を感じたとあらかわは振り返ります。安心できる定番だけでも、尖った専門店だけでも弱く、両方を揃えることで客を飽きさせない設計になっているという見立てです。

1-3. 期待値を少しずつ盛り上げる「感動設計」

施設内の水族館ゾーンでも、同じ設計思想を感じたとあらかわは語ります。入り口はやや小ぶりな水槽を使った企画展示から始まり、次に照明を落とした静かなエリア、続いて子どもたちが遊べる円形のモニュメントエリアへと続き、動物たちが放し飼いで歩き回るメインゾーンは最後の最後に用意されていました。以前シンガポールの動物園で見られなかったホワイトタイガーにもここで出会えたそうで、入園料も比較的手頃だったといいます。

最初から全力で見せ場をぶつけるのではなく、少しずつ期待値を積み上げて、最後に一番の見せ場を持ってくる。この順序そのものが、来場者の体験を設計する仕掛けになっていたわけです。

「全部フルパワーで来られると、お客さんはしんどくなる。最初はゆるく見せて、少しずつ盛り上げていって、最後にドンと見せる方がいい」(あらかわ)

1-4. 自分の商売を「入り口・理解・目的」で書き出す

ここまでの観察をビジネス全体に当てはめると、「何でもいいから商品を作って売る」というやり方の限界が見えてきます。ホームページの冒頭にいきなり長い会社案内を置いてしまう、展示会ブースで全商品を同じ強さで並べてしまう、といったケースは、まさに手前と奥の使い分けができていない状態です。実際にあらかわが見た屋台では、300円均一の詰め放題のお菓子コーナーが手前のアイキャッチとして機能し、そこから本命の商品へと客を誘導していました。

そこであらかわが提案したのが、自分の商売を紙に3つに分けて書き出すワークです。1つ目は入り口、お客さんが最初に足を止める理由は何か。2つ目は理解、それが自分に関係があると気づいてもらうポイントは何か。3つ目は目的、最終的に何をしてほしいのか。この3つ目、「ゴール」を明確に言えていないサイトや店が意外と多いといいます。

「この商品をここで買ってくださいなのか、お問い合わせをくださいなのか、予約してくださいなのか。ゴールをちゃんと言えていないサイトや店が意外と多い」(あらかわ)

しばっちに自分の事務所のケースを聞くと、正式な依頼の前段として、ホームページのコラムで自分の考え方を伝え、SNSやGoogleの口コミで実際の評判を積み上げる、という形で入り口と理解を作っているとのこと。名刺交換だけだった知人が、しばっちの人柄や考え方まで知ることで、より具体的な相談や紹介につながるようになったといいます。あらかわ自身もWeb制作の依頼を受ける際、「これが作りたい」という要望をそのまま受けるのではなく、「なぜそれが欲しいのか」という本当の目的まで掘り下げてから提案するようにしていると付け加えました。


2. 価格競争から抜け出す、差別化のTips

2-1. 許可を取れば結果は同じに見えてしまう

しばっちが取り組む行政書士の仕事は、書類を整えて許可を取得するという性質上、結果だけを見れば誰に頼んでも同じに見えてしまう業界です。店頭に並ぶ商品のように違いが一目でわかるわけではなく、これが差別化を難しくしている構造だといいます。

2-2. 誰でも書ける言葉では差がつかない

こうした業界でありがちなのが、実績数、安さ、スピード、親切丁寧、お客様第一といった打ち出し方です。しかしこれらは独立したての人でも、何十年のキャリアを持つ人でも同じように書けてしまう言葉であり、結局のところ違いが伝わりません。さらに「誰でも歓迎」「何でもやります」「他社より安く早く」とアピールを重ねるほど、実際には差がつかず、自分がどんどん疲弊していく悪循環に陥ります。

「誰でも歓迎、他社より安く早く、とアピールするほど差がつかなくなって、自分がどんどんしんどくなっていく」(しばっち)

2-3. しばっちが実践する3つの差別化

論点1: 対応範囲を先に明言する

しばっちは、自分の専門領域を明確にし、それ以外は引き受けないと事前に宣言しています。個人向けの相続やクーリングオフといった案件は専門外として対応せず、値引き交渉や、要件を満たさないグレーな案件にも応じません。弱点や対応できないことをあらかじめ公開することで、相性の合わない依頼がそもそも来なくなり、結果的に自分と相性のいい客層だけが残る仕組みです。

論点2: 掛け算でポジションを作る

阪神エリアだけでも同業者はおよそ500人ほどいるとしばっちは体感しています。単一の強みだけでは埋もれてしまいますが、決算書が読める、経営の話ができる、同業者ネットワークのハブになれる、地域貢献への意識がある、そして建設業関連の許可に関する知識・経験・人脈が豊富、という複数の要素を掛け合わせると、同じ組み合わせを持つ競合はほとんどいないポジションになります。単体の強みではなく、組み合わせでオンリーワンを作るという考え方です。

論点3: お客さんの一歩先を商品にする

お客さんは「許可が欲しい」と言って相談に来ますが、それ自体はゴールではなく、その先にある事業展開のための手段にすぎません。しばっちは、下請けを増やして事業を拡大したいのか、公共入札に参加していきたいのかといった将来像をヒアリングし、そこに近づくための資本の増強や資格者の採用・育成まで踏み込んで話すようにしているといいます。この「一歩先まで一緒に考える」部分こそが、AIや価格だけの競合には真似しにくい強みだとしばっちは考えています。

「お客さんは許可が欲しいと言ってくるけど、それは実はゴールじゃない。そこからどう展開したいかを聞いて、近づくための考え方まで話すようにしています」(しばっち)

2-4. まとめ

しばっちの差別化は、特別な裏技ではありません。自分がどうありたいか、どんな客に来てほしいかを言語化し、対応できることとできないことをはっきり示す。この積み重ねが、価格競争から抜け出す土台になっています。


エピソードの総括

今回の学びとポイント

2つのテーマに共通するのは、「なんとなく作って売る」から脱却し、お客さんの体験の順番や、本当に求めているゴールを設計する姿勢です。

押さえておきたいポイント

  • 目的買いされるものは奥に、アイキャッチになる意外性のあるものは手前に置く
  • 全力を最初から出さず、期待値を段階的に積み上げて最後に見せ場を作る「感動設計」
  • 自分の商売を「入り口・理解・目的」の3つに分けて紙に書き出してみる
  • 「実績・安さ・親切丁寧」は誰でも書ける言葉であり、差別化にはならない
  • 対応範囲を先に明言する、複数の強みを掛け合わせる、お客さんの一歩先まで一緒に考える、この3つが価格競争から抜け出す打ち手になる

あらかわ・しばっちからのメッセージ

収録の終盤、2人はAI時代における二極化への懸念を口にしていました。自分のやりたいことが明確でAIを使いこなして走っていける人と、雇われて楽をしている人との間で、差が広がっていくのではないかという指摘です。だからこそ、自分の商売やお客さんとの関係を、なんとなくではなく意図的に設計していく姿勢が、これからますます重要になっていきます。

次のステップ

まずは自分の商売を「入り口・理解・目的」の3つに分けて紙に書き出してみてください。あわせて、「自分がやらないこと」を明言できているかどうかも、一度振り返ってみるのがおすすめです。


monotips stationについて

monotips stationは、ビジネスの小ワザを紹介するWEBマガジン「monotips」から生まれたPodcastです。編集長のあらかわと副編集長のしばっちが、毎週ビジネスに役立つTIPSを紹介しています。

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