商談前の準備不足を防ぐチェックリスト術と、10月の社会保険ルール改正|monotips station 第333回
商談前の聞き漏れを防ぐチェックリスト術と、10月の最低賃金アップで変わった社会保険加入ルールをまとめた第333回。

章の「ここから聞く」を押すと、このプレーヤーが該当位置へ移動します。
商談前の準備不足を防ぐチェックリスト術と、10月の社会保険ルール改正|monotips station 第333回
イントロダクション
今回は少し早めの収録になったmonotips station 第333回。出張の予定が重なり、あらかわとしばっちが急きょスケジュールを前倒しして収録しました。
テーマは2本。しばっちパートは「打ち合わせ前の事前準備」。初めての相手との商談で、聞き漏れや条件のすれ違いをどう防ぐかという、業務経験から出てきた実践ノウハウです。あらかわパートは「10月から変わった社会保険のルール」。最低賃金の引き上げに連動して、パート・アルバイトの社会保険加入条件が静かに変わったという、見落としやすい制度の話です。
商談の相手に振り回されず、かつ制度変更にも気づかず違反してしまわないようにする。業種は違っても、どちらも「事前に知っておけば防げる」という共通点があります。
1. 打ち合わせ前の事前準備で、聞き漏れとすれ違いを防ぐ
1-1. 「とりあえず会いましょう」が一番こわい
行政書士として日々問い合わせを受けるしばっちが悩んでいるのは、相手から「詳しい話はせずに、とりあえず会いましょう」と言われるケースです。何について相談したいのか分からないまま商談に臨むと、こちらの準備が整わず、相手のペースに巻き込まれて不利な条件を飲んでしまいかねません。
そこでしばっちの事務所では、問い合わせがあった時点で電話レベルの簡単なヒアリングを行うようにしています。何の許可を取りたいのか、何の補助金について聞きたいのか、ある程度の見当をつけてから商談の日を迎える、という段取りです。
1-2. 事前に確認しておきたい2つのこと
しばっちが商談前に必ず押さえておきたいという項目は、大きく2つに整理できます。
ひとつは「相手が何を求めているか」。何の許可が欲しいのか、どんな質問をしたいのかといった、相談の核心部分です。もうひとつは「相手の現在地」。創業から何年か、従業員は何人か、普段どんな仕事をしているかといった基本情報です。完全に新規の問い合わせであれば、相手のホームページやSNSの投稿内容を事前に調べておくことも欠かせません。
あわせて、商談前に「どこまでなら譲れるか」という自分側の条件も決めておきます。至急対応を求められても引き受けられない場合や、想定より低い金額を提示された場合にどう答えるか。これをその場で考えると、相手の勢いに押されて不本意な条件を受け入れてしまいがちだからです。
1-3. 紙かメモか、「聞き漏れ防止リスト」を持って臨む
しばっちには、許認可の要件をヒアリングする中で一つの要素だけ聞き忘れ、後日改めて確認し直すはめになった経験があります。この反省から、必要な要件をキーワードだけメモにして商談に持っていくようにしているといいます。
特に注意が必要なのは、相手の興味が自分の専門の枠を超えて広がっていくケースです。本来の相談内容から話が逸れて盛り上がってしまうと、本来聞かなければならないことや、伝えなければならない条件を言いそびれてしまう。そうならないよう、絶対に聞くべきことと絶対に譲れない条件を書き出し、商談中いつでも見返せるようにしておくことが大切だと、しばっちは語ります。
「絶対に聞かなきゃいけないことと、絶対に譲れない条件を書いておいて、面談のときにいつでも見られるようにしておくのが大切なんじゃないか」(しばっち)
あらかわも似たような準備をしていて、「この許可が欲しい」という要望の裏側にある本当の目的まで確認するようにしていると話します。たとえば「ホームページを作りたい」という相談でも、本当の目的は問い合わせを増やしたいことなのか、信頼感を高めたいことなのか、単に手間を減らしたいことなのかによって、提案すべき答えは変わってきます。場合によっては「ホームページより先に、写真を撮るためのスマートフォンを買い替えたほうがいい」という、当初の依頼とは違う提案になることもあるそうです。
商談は「聞かれたことに答える場」ではなく「相手の本当の目的を一緒に見つける場」でもある。準備という地味な作業の先に、この視点の転換があります。
2. 10月から変わった、人を雇うときの社会保険ルール
2-1. 最低賃金の引き上げが、静かにルールを変えた
10月1日前後は、都道府県ごとに最低賃金が改定されるタイミングです。あらかわが番組内で紹介した例では、兵庫県の最低賃金は1116円から1172円へ、56円引き上げられたとのこと。発効日は都道府県によって異なるため、従業員を雇っている地域の発効日を確認しておく必要があります。
この最低賃金の引き上げが、実は社会保険の加入ルールにも波及しています。
2-2. 「106万円の壁」が実質的に意味を失った理由
これまで、パート・アルバイトが社会保険に加入する条件のひとつに「月収8.8万円以上」という賃金要件がありました。いわゆる「106万円の壁」です。この賃金要件は撤廃され、残る加入条件は次の4つに整理されました。
- 週の労働時間が20時間以上
- 勤務先の従業員数が51人以上
- 学生ではない
- 雇用見込み期間が2ヶ月を超える
この4つをすべて満たすと、月収の金額にかかわらず社会保険への加入が必要になります。なぜ賃金要件が不要になったかというと、最低賃金が上がり続けたことで「週20時間以上働けば、ほぼ自動的に月収8.8万円を超える」状態になり、賃金要件が実質的な意味を持たなくなったためだとあらかわは説明します。
なお、所得税が関わる「103万円の壁」はこれとは別の話で、こちらは以前にすでに撤廃され、178万円に引き上げられています。「年収の壁」とひとくくりに語られがちですが、税金の壁と社会保険の壁は別物だという整理は、雇う側にとって押さえておきたいポイントです。
2-3. 「うちは51人以下だから関係ない」と思い込まない
従業員数が51人以下の小規模事業者であれば、社会保険の加入対象から外れると考えがちです。しかしあらかわは、この思い込みに注意を促します。
「51人以下だから関係ないわと思っていたとしても、他のルールで加入しろと言われる可能性があるから、本当に要注意」(あらかわ)
人を雇う側が気づかないまま条件を満たしてしまい、手続き漏れのまま時間が経ってしまうケースは起こりえます。あらかわがすすめるのは、社労士への相談を待つ前に、まず年金事務所へ直接足を運んで聞いてみることです。年金事務所であれば無料で、自社の状況に即した正確な案内を受けられます。制度の細部を独力で追いかけるより、専門窓口に一度確認してしまうほうが、結果的に近道になりそうです。
エピソードの総括
今回の学びとポイント
しばっちの商談準備も、あらかわの社会保険ルールも、共通しているのは「知らないまま進めると損をする」という点です。
- 商談前には「相手の要望」と「相手の現状」を最低限ヒアリングしておく
- 譲れない条件は商談前に自分の中で決めておく
- 聞き漏れを防ぐメモや紙のリストは、話が脱線したときに戻ってくる目印になる
- 10月の最低賃金引き上げにより「106万円の壁」は実質的な意味を失い、週20時間・従業員51人以上などの4条件で加入要否が決まる
- 「うちは小規模だから関係ない」と思い込まず、不安があれば年金事務所に直接確認する
あらかわ・しばっちからのメッセージ
どちらのテーマにも共通するのは、「あとで困らないための、ひと手間」です。商談でも制度対応でも、事前に少し調べて、少し書き出しておくだけで、当日や後日のトラブルはかなり防げます。
次のステップ
次に誰かと初めて打ち合わせをする機会があれば、聞くべきことと譲れない条件を一枚のメモにしてから臨んでみてください。また、パート・アルバイトを雇っている方は、最新の加入4条件に照らして、自社が対象になっていないか一度確認しておくことをおすすめします。
monotips stationについて
monotips stationは、ビジネスの小ワザを紹介するWEBマガジン「monotips」から生まれたPodcastです。編集長のあらかわと副編集長のしばっちが、毎週ビジネスに役立つTIPSを紹介しています。
Podcastを聴く: 各種Podcastプラットフォームで配信中です。
最新情報をチェック: WEBマガジン「monotips」もあわせてご覧ください。
感想・リクエスト募集: 番組へのフィードバックは、WEBマガジン「monotips」のお問い合わせフォーム、またはnote・Xでお待ちしております。


